私の頭の中の会話 その3

 「どうしてもわからないんだよね」

 何がです?

 「向上心バリバリな人の気持ちが」

 向上心バリバリな人って、例えばどんな?

 「『もっと強くなりたい』とか、『もっとうまくなりたい』という気持ちを持って、そうなるために具体的な努力をしてそれなりの結果を出せている人のこと」

 マンガやアニメによく出てきますよね。○○王に俺はなるとか巨人を必ず駆逐するとか。

 「まあ物語的にはキャラクターの目的がハッキリしている方がわかりやすいからね。今はそういう架空のお話のことじゃなくて」

 マンガの読み過ぎですよというオチを用意していたのになあ。

 「知らんがな。えーとほら、以前、吹奏楽をやってた頃のことを書いたじゃない?」

 ええ。何を言いたいのかよくわからなかったあの記事ですね。

 「そうそう。あの記事で私が言いたかったことは今回の疑問と関係あるのよ」

 つまり吹奏楽が好きでちゃんと練習して上達してコンクールでいい成績取ってる人の気持ちがわからないと?

 「先に言われちゃったか」

 そんなの、あなたが吹奏楽をそれほど好きじゃないから、てことでしょう。

 「あー、そっか」

 あなたは元々吹奏楽なんて好きではなかった。楽器を演奏することにも興味はあまりなかった。でも自分の居場所を確保するために、仕方なく続けていた。それだけの話ですよ。

 「それだけの為に思い悩んだり、長い年月をかけていたのか……」

 でもあなたにとってはあの場所は必要だったでしょ? 少なくとも当時は。

 「うん。なんだかんだでね。でも結局やめちゃったし、好きでもないのに続けても身にならないものなんだね」

 だから好きなことをやればいいんですよ。

 「それだよ! いつもそこでつまづくんだ」

 あー、あなたの好きなことって、受け身なことばっかりで上達とか伴わないですものね。

 「そうなんだよ。だからうらやましいんだよ。やりたいことに邁進できてる人のことが」

 まあ現実を見てみると、(受け身じゃない)やりたいことがあっても、いろんな事情で出来なかったり、やめざるを得ない人だってたくさんいるんじゃないですか?

 「確かにね」

 そういう人たちの無念さと比べたら、あなたのそのうらやましい気持ちなんて糞みたいなもんですよ。

 「ずいぶん言ってくれるねえ」

 だってそうでしょう。やりたいのにできないのと、やりたいことが最初からないのとでは、後者の方がよっぽどお気楽ですよ。

 「まあ、そうかも」

 ある意味あなたはラッキーなんですよ。最初から競争する気がない分、競争に巻き込まれて痛い目見るようなことがなく済んでるじゃないですか。

 「本当にそれでいいのかねえ? だって世の中競争社会でしょ? 働くことになったらさあ」

 ストーーーーップ!!! 働く話は今は禁止!!! また寝込みたいんですか??

 「うわあすごい剣幕」

 とにかく今日はもう終わり! ちょっと元気になったからって調子に乗るもんじゃありません。

 「へいへい」