マンガ感想

うみべの女の子 2 (F×コミックス)

うみべの女の子 2 (F×コミックス)

 作者は以前、『マンガに萌えとか求めてない』と語っていた。

 現実の女性の本質から目を背けて、男の理想を詰め込んで造り上げたのが萌え系二次元美少女キャラだとすれば、どんなに醜かろうと現実の女性から目をそらさずにガン見して、そのままを紙に落とし込んだのがこの作品に登場する小梅というキャラであり、彼女は前述の萌え系キャラとは対局の位置にある。

 嘘なんかついてませんという顔で嘘をついたり、自分の都合で男をさんざん振り回したり、さりげなく女友達を裏切ったり、女性というのはそういう生き物であるということがこのマンガではしっかり表現されきっている。

 78ページから80ページまでの磯辺の台詞(小梅に対する批判めいたもの)が的確すぎるんだよなあ。そしてそこまでわかっていながら『お前は何も知らなくていいんだよ』なんて吐き捨ててあんな行動に出てしまう磯辺。彼の好きな人は『優しい人』なんだけど、結果的に彼が求めるかたちで優しくしてくれる人間なんてひとりもいなく、結果的に一番『優しい人』というのは彼自身なのかもしれない。

 イエローモンキーの「JAM」という曲に『過ちを犯す男の子 涙化粧の女の子』という歌詞があって、『涙化粧』って何だよ? と長年疑問に思っていたんだけど、終盤の小梅の号泣シーンで、ああ、これが涙化粧というやつかも、と思った。

 嘘泣きとは違う、マジ泣きなんだけどあくまでもそれは化粧(たまたまだけど『過ちを〜』は磯辺に当てはまる)。

 最後のページ、一度目はなんだか投げっぱなしな終わり方だなあ、と思ったんだけど、よくよく考えて読み直すと戦慄ものだ。萌えとは対局にいるはずの小梅がまるで萌えキャラみたいな振る舞いをしている。そう考えると気持ちが悪い。この描き方は、狙っているに違いない。……さすがに深読みしすぎかもしれないけれど。

 何にせよひたすらぼんやりしたような作品にならなくてよかった。