私の頭の中の会話

 やりたいことは何ですか?

 「特に思いつきません」

 全くないわけではないでしょう? 何でもいいからあげてみてください。

 「ゴロゴロしたり、アニメを観たりマンガを読んだり、音楽を聴いたりライブに行ったり」

 ほら、たくさんあるじゃないですか!

 「いやでもこれ、全部遊んでるだけですよね? これらをすることで褒められたりはしませんよね?」

 ゴロゴロすることで体を休めることができますから、これは大切なことです。エンターテイメントを消費することは、それらを提供している側にとって必要なことです。褒められなくとも、無意味ではありません。

 「確かに、需要がなければ供給もできない。でも消費ばかりしていていいのかな? って思うんですよ」

 だってあなた、供給できるだけのスキルもやる気もありませんよね?

 「え、ええ、まあ」

 なら仕方ないでしょ。

 「で、でも、私だって少しは役に立つことしたいし、自分で稼いだお金で遊びたいですよ」

 役に立ちたいなら目の前にやることがあるでしょ。家事とか家事とか家事とか。新しく買った掃除機、早速放ったらかしにしてるんじゃありませんよ!

 「わかりました、掃除機かけますよ。でも家事ではお金稼げませんよね?」

 なぜそこまでお金を稼ぐことにこだわるんです? 大してやる気もないくせに。

 「少しはありますよ、やる気」

 少しじゃだめなんですよ。世の中そんなに甘くないんです。

 「私だってそう思って、たくさんやる気出さなきゃって思ってきましたよ。どうしたらやる気が出るのか、考えたり調べたりしてみましたよ。でもないんですよ! 出せないんですよやる気!! こんな私に誰がしたっ!!」

 ちょ、ちょっと落ち着いて……。

 「仕方ないからやる気のある振りをするしかなかったんですよ! でもバレちゃうんですよ。わかる人にはわかるんです。私のやる気が見せかけでしかないってね! 本当にやる気がある人に囲まれたときの恐怖って半端ないですよ。怖いんです。もう嫌なんですよ!!」

 わかったからとりあえず掃除を……。

 「わかってないわかってない!! 何で私はこんなにやる気がないんだよ!?」

 その答えがわかったところで、あなたの欲しがっているやる気が生じるわけではありませんよ。

 「……」

 あえて言うなら、個性ってやつですよ。

 「そんな個性、要りませんよ」

 要るとか要らないとかそういう問題じゃないんですよ。さあ、もう疲れたでしょう。少しゴロ寝でもしたらどうです?

 「その前に掃除機かけますよ」

 ああそう。じゃあそうしてください(めんどくさいやつだなあ)。